今回の個展作品の制作では、画面に極力手を加えるのを抑え、地の余白を活かすことに専心しました。いつもついつい手を重ね、どう絵をまとめ上げようかと四苦八苦してしまいます。今回はとにかく無造作に色を置かないよう、余白をなるべく美しく残せるよう心掛けました。制作中の作品を眺め、放っておく時間が長く、今までのように色材を重ねていく快感に乏しかったため、じれったい思いもありました。
今回の画材は、今まで使っていた「アクリル絵の具」を控え、水彩色鉛筆が主になっています。水彩色鉛筆で描き、水を含んだ筆で刷き、布でぬぐっていく作業です。そこで現れる色材の状態をなるべく受け入れ、良い形を活かし、最低限の手を加え作品としての成立を見定めていく。その制作は、まるで食材の特長を生かしシンプルな調理を行う和食料理人のような心持ちでありました。
変に自分の当初のイメージに沿って頑なに描くのではなく、作為を手放し、色材が画面に展開される状況を受け入れ、生かし、導いていくと言っても良いかもしれません。その結果生じる画面は、より自由で、軽やかで、豊かになるように思われました。
心惹かれ、制作にも影響を与えている「禅」の考え方に通じるでしょうか。こだわりを捨て、雑多な想いを手放し、ありのままを受け入れ、自由で軽やかな心境に至る。そのようなことを、画面に向かう制作の中で実践していければ、と思っています。まだ手探りの中ですが、修行を重ねて参ります。稚児が無邪気に遊ぶような、融通無碍な制作に憧れて。
来年は、同時期、同会場で個展、そして春先に同会場でグループ展を予定しています。
