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2020年個展-真白へ― 終了

トキ・アートスペースでの2回目の個展が終了し、かなりの時間が過ぎました。ようやく作品をアップします。
もとは5月下旬に開催予定の個展でしたが、1回目の非常事態宣言の中、画廊オーナーのご厚意により8月にずらして頂きました。
残暑厳しく日差しの強い週でしたが、お陰様で前回の個展と同数程のお客様に恵まれました。有難うございました。

 

今回の個展の展示イメージは、前回の個展終了直後にすでに沸いていました。モチーフは引き続き、波間にただよう“白波”です。
展示作品の1つの傾向は、「真白へⅡ-ⅰ」から「真白へⅡ-ⅴ」に至る限りなく白い画面です。画面の中に余白として残していた白を、画面のメインとして積極的に描こうとしました。今まで一切絵の具を塗らずにキャンバスの地塗りのままにこだわっていた空白を、白で描いていくこともいとわないこととしました。よく考えれば地塗りの白も自分で塗っていたのです。白で描いていくことで、概念的にとらえていた空白を、肩の力を抜いて柔軟に、正対して向き合えるようなりました。
もう一つの傾向は、「真白へⅡ-ⅵ,ⅶ」及び「真白へⅡ-ⅷ~ⅻ」の作品です。それぞれ画廊の一つの壁面全体を作品に見立てた組作品ですが、配置は可変でそれぞれ単体でも成り立つものとして制作しています。壁面の縁に展示し、壁面の白がメインとなるよう意図しています。これは、前回の個展にいらしたお客様からの示唆から発想したものです。私が「絵の端の何も描かれていない余白は、作品の外に拡がる白い壁面へとつながっている」旨の話をしたところ、「では作品を壁の縁に飾ればいいのに」とその方は言われたのです。しかも全く同じ趣旨の話を別の方からも頂きました。
作品を手にされた方が自分の部屋の壁の、好きな縁に飾ってくれることを想定して描いています。

 

私が扱おうとしている“真白”とは、虚ろな空洞である私の心の中の空白を、全てが充溢した静謐な空白に変換しようという大それた試みで、夢想しつつも筆はなかなか進みません。いつの日か「息するように絵が描きたい」と切望しています。